📌 結論を先に
バコン(Bakong)は2020年10月28日に正式運用開始された、カンボジア国立銀行(中央銀行)のブロックチェーン決済システム。日本のスタートアップ・ソラミツが許可型ブロックチェーン「いろは」で開発し、世界に先駆けて準CBDC(中央銀行デジタル通貨)として注目を集めています。電話番号で電子財布が使え、5秒以下で決済が完了する革新的システムの全貌を解説します。
カンボジアは2020年10月、世界に先駆けて中央銀行発のブロックチェーン決済システム「バコン(Bakong)」を導入しました。米国・欧州・日本・中国も研究段階だったCBDC(中央銀行デジタル通貨)類似システムを、新興国カンボジアが先行運用したことは国際的に大きな注目を集めました。なぜカンボジアが世界最先端を実現できたのか、その背景と仕組みを解説します(出典:日本経済研究センター/ソラミツ/CoinDesk JAPAN/ジェトロ)。

バコンとは?基本スペック
- 名称:バコン(Bakong、クメール語で「強い」「祖先」の意味)
- 運用開始:2020年10月28日
- 運営主体:カンボジア国立銀行(NBC)
- 開発企業:ソラミツ株式会社(日本・東京渋谷)
- 基盤技術:許可型ブロックチェーン「いろは(Hyperledger Iroha)」
- 合意アルゴリズム:YAC(Yet Another Consensus)
- 取引処理時間:5秒以下
- 主な機能:個人間送金・銀行間送金・QRコード決済・口座連携
カンボジア国立銀行は、バコンを「CBDCそのもの」ではなく「不換紙幣でバックアップされた決済システム」と定義しています。学術的には「準CBDC」「ハイブリッド型CBDC」と分類されることが多く、明確な定義は今も議論の対象です。
なぜカンボジアが世界初を実現できたのか?3つの理由
カンボジア中央銀行がバコン導入を決定した「3つの理由」を、開発を担当したソラミツのCEOが明らかにしています(出典:CoinDesk JAPAN)。
① 金融包摂(Financial Inclusion)
カンボジアは銀行口座保有率が低く、伝統的な金融サービスから取り残された人口が多い国です。バコンは電話番号さえあれば電子財布を作れるため、銀行口座を持たない人々が金融サービスにアクセスできる「金融包摂」を実現します。スマートフォン普及率の急上昇と合わせて、デジタル金融の裾野が広がりました。
② 自国通貨リエルの強化
カンボジアは1992-93年UNTAC以降の「ドル化」を解消し、自国通貨リエルの存在感を高めることが長年の政策目標でした。バコンではリエル建てと米ドル建ての両方が選択可能ですが、リエル建ての利便性を向上させることで、段階的にリエルのシェアを高める狙いがあります。
③ 国家全体の決済アーキテクチャ簡素化
従来のカンボジアの銀行間決済システムは煩雑で、銀行ごとにアプリ・QRコード・送金手数料が異なっていました。バコンは全銀行を統合する「決済インフラ」として機能し、利用者はどの銀行口座からでもバコン経由で送金・受取が可能になりました。
技術的特徴:許可型ブロックチェーン「いろは」とYAC
バコンの技術基盤は、日本のソラミツが開発した許可型ブロックチェーン「いろは(Hyperledger Iroha)」です。これはLinux Foundationの Hyperledger プロジェクトの一部として公開されているオープンソース実装で、企業・政府向けに設計されています(出典:CoinDesk JAPAN/日本経済研究センター)。
- 許可型:参加者が認証された機関に限定(中央銀行・銀行のみ)
- YAC合意アルゴリズム:分散合意を効率化、5秒以下で取引完了
- スマホ財布:電話番号登録で個人間送金可能
- 銀行口座連携:従来口座とバコン財布の橋渡し
- QRコード決済:店舗での即時決済
バコン導入後の経済的影響
2020年10月の運用開始以降、バコンの利用は急速に拡大しています。2026年時点でカンボジア国内のキャッシュレス決済の中核として機能し、観光客向け店舗・タクシー・市場・レストランなどで広く採用されています。送金手数料の劇的な低下、銀行口座保有率の上昇、消費活動の活発化など、複数の経済指標で効果が確認されています。
ソラミツはカンボジアモデルを他の太平洋島嶼国にも展開しており、ソロモン諸島・フィジー等で類似のCBDCシステム導入の検討が進んでいます(出典:ジェトロ 2025年)。「カンボジアからグローバルサウスへ」というデジタル金融の波が始まっています。
海外不動産投資家視点:バコンと不動産取引
① 賃料受取の利便性向上
カンボジア不動産の賃貸オーナーにとって、賃料受取は重要な実務です。バコン導入以前は銀行振込・現金回収が中心でしたが、バコン経由ならテナントから即時・低コストで賃料受取が可能になりました。賃貸管理会社経由でも、バコンによる送金で日本側オーナーへの送金スピードが向上しています。
② 不動産大型取引は依然米ドル建て
注意点として、不動産購入・売却の大型取引はバコンではなく、米ドル建ての銀行送金(SWIFT等)で行われます。バコンは小口決済向けで、コンドミニアム1部屋分の数千万円規模の決済には対応していません。不動産投資全体の通貨は引き続き米ドル建てが基本です。
③ カンボジア金融デジタル化の象徴
バコンの導入は、カンボジアが新興国でありながら世界最先端の金融インフラを実現できる国であることを国際的に示しました。投資環境としての魅力が高まる重要なマイルストーンであり、外国直接投資・海外不動産投資の安心材料となっています。
まとめ
- バコンは2020年10月28日運用開始、世界初の中央銀行ブロックチェーン決済システム
- 日本のソラミツが許可型ブロックチェーン「いろは」「YAC」で開発
- 3つの目的:金融包摂・自国通貨リエル強化・決済アーキテクチャ簡素化
- 5秒以下の高速処理、電話番号で電子財布、QRコード決済対応
- 海外不動産投資への影響:賃料受取の利便性向上・大型取引は依然米ドル建て・投資環境の魅力向上
よくある質問
バコンはCBDCですか?
カンボジア国立銀行は「CBDCではなく、不換紙幣でバックアップされた決済システム」と定義しています。学術的には「準CBDC」「ハイブリッド型CBDC」とも呼ばれ、定義は議論の対象です。
外国人もバコンを使えますか?
はい、カンボジアの携帯電話番号を取得すれば外国人も電子財布を作成できます。視察・滞在時に現地SIMを購入すればバコンを試すことが可能です。
不動産購入にバコンは使えますか?
使えません。バコンは小口決済向けで、不動産購入の大型取引は米ドル建ての国際送金(SWIFT等)で行います。賃料受取・小額決済にはバコンが便利です。
バコンによってリエルは強化されましたか?
バコンによりリエルの利便性は向上しましたが、不動産・大型商業取引における米ドル決済は引き続き支配的です。中央銀行は「段階的なリエル化」を目指していますが、短期間での米ドル離脱は困難と見られています。